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 業界の雑誌「鶏卵肉情報」の2012年新春特大号は「動き始めたアニマルウェルフェア」と題した特集号でした。当社は「人・動物・環境の健康を考える」を企業メッセージとしていることもあり、とても興味を持って拝見しました。 

 その中で、東京農業大学農学部で動物福祉のカリキュラムを講義している信岡誠治准教授のページがあり、学生さんたちの反応として動物福祉の賛否両論が書かれていて大変興味深く拝見しました。なるほどと思い、思わずマーカーで線を引いたところを幾つか紹介します。

 〜賛成派の意見〜
  • 劣悪な環境で育った家畜は決していいモノとは思えない。
  • 動物にも感覚や感情があることが判明している。人間自体が「動物がかわいそう」という感情を持っている限り、動物をむやみに痛めつけたり、大きなストレスを与えるのは良いことではない。
  • 動物福祉の考え方を畜産業に導入すれば、健康に育ち、動物が本来の能力を発揮し、生産性と効率性が向上し、安心で安全な畜産物が消費者に届けられるようになる。
  • 動物は人と同じ生命を持った生き物である。肉などとして人の食料となり、なくてはならない動物であるが、利用させていただくことに感謝し、その気持ちを忘れないようにしなければならない。
  • 地球上の動物は同じ生き物として人間の福祉だけでなく動物の福祉も考えて、地球上に生きるすべての生き物の「自由」を尊重していくことが必要である。
 〜反対派の意見〜
  • 元来、家畜やペットのような動物は人が自らの生活をより円滑にするように進化させた動物であり、はっきりといえば人間が利用するための動物である。
  • 人口増加が続いている世界で動物福祉を認めると、工業的な畜産生産が否定され効率的な畜産生産の障害となり、畜産物価格の高騰と畜産物の需給ギャップが生じ餓死者が増加していくことが考えられる。
  • ライオンががシマウマを食料としているのと一緒である。ただ、人間を食べる動物がいないため「動物福祉」という言葉を使いたくなるのである。
  • 理性を持たない動物に対して福祉を定めるのは、殺すための言い訳や情けはかけたという自己満足でしかない。
  • 家畜は「保護」されて生きており、一定の繁栄を保っており、野生ではここまで繁栄できない。

 さて、いかがでしたでしょう。アメリカの大統領選挙の争点じゃないですが、中絶や同性愛結婚のように微妙な問題ですね。学生さんのほとんどが賛成派だったようですが、現実に落としたときにはやっぱり経済性とのバランスがキモになりますね。

 さて、それとは別のページに株式会社イシイの小原愛氏が「生産者の福祉が確保できなければ、鶏の福祉は実現できない。生産者の労働環境を整えることで、仕事に対するモチベーションがあがり、動物への配慮ができ、成績・収益アップにつながる。人の幸せ=鶏の幸せである」と述べていたが、まさにその通り。原点を思い起こさせてもらいました。

 鶏卵肉情報の定期購読と、2012年新春特大号(税込1050円)などバックナンバーはこちらからどうぞ。
 
(写真:インドにて)