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健康長寿をPPKと言うのだそうです。ピンピンコロリの略です。その反対がNNKで、ネンネンコロリの略だそう。健康長寿でいられるためには、以前は粗食がいいとも言われた時期がありましたが、今は肉を食べることが推奨されています。だからか肉ブームを煽るような雑誌の特集などが組まれ、炭水化物は半分に減らすなどの糖質制限も同時に定着して、結果的にチキンの消費量も増えているのでしょう。
日本の人口のピークは2010年で1億2806万人。昨年の国勢調査で1億2711万人とされておりますが、割り算しますとピーク時の0.7%減です。高齢化はもっと着実に進んでおり、別の角度から見ると、その高齢層が肉を食べるようになったのと胃が小さい幼児や児童の層が減っていることでチキンの消費量が増えているということも言えるのではないでしょうか。
輸入品はほぼイコール冷凍という商品特性もあって、我々国内産地はいま、高度成長期以来の我が世の春を謳歌している状況です。規模拡大のために鶏舎に設備投資したくても環境問題などでなかなか進まず、需要に供給が追いつかない状態が続いています。しかし、この需給の好バランスはいつまで続くのでしょうか?
2017年に入社する大卒社員が65歳で退く2060年までを考えてみましょう。人口は2050年には1億人を切り9707万人でピーク時の76%、2060年には8673万人で同67%、つまり3分の2まで減少します。その頃にはさすがにチキン消費は明確に減っているのでしょうね。
今建設している鶏舎の寿命が40年程度とすれば、ちょうど2060年頃に寿命が尽きるわけで、現在国内に存在する鶏舎の老朽化の度合いを考えると供給過多の心配は無いと言ってもいいかもしれません。
遠い将来の話が先行してしまいましたが、この先10年で見てみてもやはり人口減少が加速して行くとのこと。2025年頃にはこのチキン業界にとっての今の需給の好バランスは崩れるのではないでしょうか。その頃には日本経済全体で縮小する市場に対応していくことが議論され、これまでの成長基調の考え方は捨て去られるでしょう。
ただ気になるのは、地方に住んでいる者として、あるいは沢山の雇用を預かる立場として、外国人妻が多くなっていることを肌で感じていることです。地方崩壊を防ぐためには適齢期の女性がそこにいることが大切ですが、今若い世代の女性が都会に出ていくことが多くなっている状況からすれば、地方に外国人の受け入れを更に拡大していくしかないのでは。
現在の技能実習生という建前の枠から脱皮することで、日本人男性との成婚率を高め、人口増に結びつけていくしか道がないと思います。外国人実習生を管理する立場とすれば、恋愛禁止が建前なのが常識なわけですが、聞く所によれば既に地域の人口減に対しての処方箋として、いま来ている独身実習生たちとの集団見合いのようなことをもアレンジしてやっていらっしゃる企業さんもあると聞きました。そんな現実を考えると果たして人口減が予想通り進まないのではないかとも思いますし、そうあってほしいと思います。
さて、次期米国大統領トランプ氏をはじめとして、内向きの経済志向の政治家が世界各地で台頭してきております。インターネットを伴うグローバル化が行き過ぎた反動からか、世界経済全体がこれまでの常識が覆される状況に陥ることも予想されています。またこの先、技術の進歩で冷凍解凍したものでも鮮度が変わらないなんて時代が来るかもしれません。いや、要求率の異常に良い昆虫が動物性蛋白質の主役に成るかもしれません。
そこまで考え始めると、今のチキン業界の我が世の春は一瞬で過ぎ去ってしまうのかもと覚悟を決めておくべきだと改めて思うのですが、いまチキンの価値は世界人口の登り基調の中で最高に価値があるわけですし、有り難い商品に携われているという気持ちで、引き続き「チキン道」を極めていきたいと思います。
(鶏鳴新聞2017年1月5日号寄稿)