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 鶏肉の消費はここ10年で4割増えたそうです。健康のためには高齢者でも肉を食べるのが良いとされはじめたこと、安い鶏むね肉が調理次第でパサツキを抑えられ美味しく食べられることが浸透したこと、増えるコンビニでのレジ横のスペースをチキンが占めていること、最近ではサラダチキンが浸透してきたこと、競合する魚の消費が減少中であること等がその要因でしょうか。しかも2014年、マクドナルドの賞味期限切れ原料を使用していたことが報道されて以降、国産チキンへのニーズは高まり、作れば売れる状況となっております。

 それでも日本人一人あたりの鶏肉消費量は米国人の3分の1程度であり、伸びる余地がまだまだあると思います。また、中国では伝統的に豚肉の消費が伸びていますが、それ以外の国では鶏肉が一番伸びています。鶏は地球上の限りある穀物資源を最も効率よく肉にできますし、その結果安いので利益を簡単に得たい加工品の原料としても使いやすいでしょうし、ご家庭でも量を遠慮なく沢山食べられる肉として選ばれるでしょう。栄養価としても、抗酸化作用が高いむね肉をはじめとしてバランスが良いとされています。チキンスープは欧米人にとっての味噌汁みたいなものですし、お隣韓国では蔘鶏湯(サンゲタン)は滋養強壮によいとされる料理です。

 このように八方美人さながらあらゆる角度から見て鶏肉は素晴らしい素材で、なおかつ育種改良が年々進むため、同じ体重になるのに必要な飼料は年々減るばかり。黙っていても確実にコストダウンが進む恩恵が得られるのです。

 ‥などと今では言えますが、昭和30年代にアメリカよりブロイラー産業が持ち込まれるまでは鶏肉は高価な肉で、高度成長の波に乗って40年代から50年代に伸長したという割と新しい食品素材です。しかしその後輸入品が安価に持ち込まれ、一時はピーク時の2割ほど国内生産は減少しました。当社も債務超過寸前まで行きましたが、そういった非常に厳しい時代を凌いで、消費者の国産回帰という流れに支えられて今に至っております。

 そして2016年以降、国内の鶏肉生産は過去最高を更新し続けております。岩手県は鹿児島県、宮崎県に次いで第3位で国内生産の約17%を占めておりますが、最大の首都圏マーケットには九州勢より1日新鮮なものを届けることができるという地の利があります。また、岩手人は道徳心が高く我慢強く仕事に取り組みます。岩手がチキン生産で日本一にならない理由はないのです。皆さん、手伝ってください!

(岩手県中小企業団体中央会機関誌NEXUS2017年12月号寄稿)