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 岩手県雫石町在住の写真家、奥山淳志さんの写真を追っているうちに、この本「かなしみはちからに 心にしみる宮沢賢治のことば」にめぐりあいました。

 これは岩手の生んだ稀代の詩人、宮沢賢治のことばを明治大学文学部教授の斎藤孝さんが選んで編集したものです。

 地元岩手の偉人なのに私自身は宮沢賢治の書いたものに接することなく49年過ごしてきましたが、これはとっつきやすかった。内容は、奥山さんの岩手の美しい風景の写真に、数行の賢治の言葉が詩の形で並んでいるというものです。また、齋藤孝さんの6ページのあとがきがいい。

 自分自身と向き合うとき、そこには部屋の中で内へ内へと深く掘り下げていく垂直方向の掘り下げと、屋外で外へ外へと広がっていく、宇宙までも広がるような水平方向との広がりの二つがあります。賢治の場合、この両方のスケールがとてつもなく大きいのです。これは、私達が普段生活をしているなかで忘れがちな、本来の生命が持つスケール感です。

 まさにその通りでした。これは東日本大震災の直後に企画された本なわけですが、だいぶ震災のムードが和らいだ今こそ自然と入ってくる文章だったような気がしました。