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 山形県鶴岡市に行ったついでに、かねてから行ってみたいと思っていた土門拳記念館に案内していただきました。

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 おおっ、写真家として名高い土門拳にふさわしく、酒田市が作ったこの建物はなかなかモダンな風景です。しかも、これで1983年の建設とはビックリ。30年近く前の作品とは到底思えない。

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 今回のメインの展示は「昭和の風貌(かお)」ということで、土門拳のほか濱谷浩、林忠彦、熊切圭介、田沼武能、齊藤康一のモノクロ作品が並んでおりました。

 時間も限られておりましたので、じっくり観るわけにはいきませんでしたが、今の時代では期待できないであろう昭和に生きる著名な人物の濃い意思が表情に現れていて、もっと自分の思いに拘って生きていいのかもしれないと思いました。年配の方の写真が多かったのですが、やっぱり人生が顔に出ています。

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 サブの展示は、土門拳の「東寺」。写真をじっくり見る時間がなかったので、なかなか見れないであろう彼の生涯をまとめた16分のビデオがその部屋の片隅で放映されておりましたので、そっちを見ました。

 写真に取り組む前に彼が書いた絵が出てきましたが、その絵がなんとも素晴らしい。この日一番の印象に残りました。やっぱり感性の出来が違うわ。

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 機会があればまた時間をたっぷりとって訪れてみたいものです。1時間じゃどうにもならん。

 最後に、彼の写真に対する思いを綴った有名な「写真の立場」と題された文章をここに載せておきますね。(レイアウトは自己流です)

実物がそこにあるから、実物をもう何度も見ているから、
写真はいらないと云う写真では、情けない。
実物がそこにあっても、実物を何度見ていても、実物以上に実物であり、
何度も見た以上に見せてくれる写真が、本当の写真である。

 
写真は肉眼を超える。
それは写真家個人の感覚とか、
教養とかにかかわらない機械(メカニズム)というもっと絶対的な、
非情なものにかかわる。
時に本質的なものをえぐり、時に鎮末的なものにかかずらおうとも、
機械そのものとしては、無差別、平等なはたらきにすぎない。
そこがおもしろいのである。
 
写真家は、機械のうしろに、小さく小さくなっている。
写真家が小さく小さくなって、ついにゼロになってしまったとき、
すばらしい写真が撮れているようだ。
しかしゼロになることは、なかなかむすかしい。
せいぜい、シャッターを切るとき、あっちの方を眺めるぐらいなものだ。
写真の中でも、ねらった通りにピッタリ撮れた写真は一番つまらない。
「なんて間がいいんでしょう」という写真になる。
そこがむずかしいのである。