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 一戸町に住んでおりました作家、三浦哲郎(てつお)さんが79歳で8月29日にお亡くなりになりました。

 処女作「忍ぶ川」で芥川賞を受賞し、座敷童子(ざしきわらし)が出る金田一温泉を舞台にした「ユタと不思議な仲間たち」は劇団四季のロングランミュージカルになっているという著名な作家です。

 その三浦さんの短編で「出刃」という、ブロイラー工場に勤める母をめぐる息子(与五)の心情を描いた作品があり、「木馬の騎手」という単行本(1979年発刊)に収められております。ちょっとだけ引用させていただきます。

 いまから五,六年前までは、与五のところでも鶏を二〇羽ほど飼っていて、与五はよく母親と一緒に産みたての卵を手籠に入れて、村はずれの通称十文字という養鶏場まで買い取ってもらいに通ったものであった。十文字では、村から買い集めた卵と自分のところの卵を一緒にして、町のマーケットや食料品屋に卸していた。

 いまはもう、鶏など一羽もいないが、それは十文字が、もっぱら卵をとっていた養鶏場を卵よりもっと儲かるブロイラーの飼育場に切り替えたからで、新しくブロック塀で囲まれた十文字の裏庭には、スレート屋根の建物や暖房の煙突が聳(そび)えたりして、以前の養鶏場の面影がすっかりなくなっている。

 
いや、本当にリアルに創業期当時の様子を解説していただいております。父と3歳違いだし、お目にかかったことがあるんでしょうね?

 ご冥福をお祈りいたします。