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 鶏卵肉情報さんの企画で、昨年12月下記の原稿を書き上げ、このほど発行されました。初夢企画と言うことで、業界人に「面白い」と思って頂ければ幸いです。

 1963年生まれ、新人類と呼ばれた世代に属する私である。子供の頃、21世紀とは、スタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」の世界であり、更に続編の「2010年」なんてそうとう先の話だと思っていたら、気がついたらこうして迎えてしまっている。

 2030年を想像してみなさいという原稿依頼に、時の流れるスピードに追い付いて考えることができていない自分を目の当たりにせざるを得ない。そういう人が2030年など語れるわけはないのだが、引き受けたからには考えてみよう。

 さて、インターネット、携帯電話が世界中に普及し、電気自動車の時代が目の前に来て、中国やインドが世界経済の主役になろうとしているという意味では、20世紀中に予想されたものが現実になっているといえるだろう。では我がチキン産業はどうかというと、ほとんどこの10年で何も変わっていないのではないか。

 いや、もう20年も変わっていないのではないか、とこの業界に入って24年を迎える私は思う。だから、2030年のチキン業界はマクロ的にいえば「今とほとんど変わってないのではないか」の一言で済ませたいというのが、偽らざる私の本音である。でも、それでは身も蓋もないので、無い知恵を振り絞って、業界に起こる変化を予想してみる。

 まずは鶏の育種である。育種会社の努力により、これまでもおおよそ2年に1日ずつ、同じ体重になるのに日齢を減らしてきたので、2030年には、鶏の性能的には?40日で3キロになることが予想される。要求率は1.5倍に届くのではないか。

 実は私、昨年ニュージーランドに行ってきた。あるチキン会社を訪問したのだが、42日で3.1キロ、要求率は1.6だという。同席した工場の機械設備会社T社のK社長によると、ワクチンプログラムの違いもあり、世界で一番鶏の成績が良いのはニュージーランドだそうで、もうすでにその水準に近いところまで行っている。

 いや、もしかして国内でもそれくらいの成績を出している農家さんもいるのかな。どんどん日齢が若くなるということは、肉は淡白になっていく。私はおいしいと思うが。

 だからというわけではないが、チキンは経済動物であるから、雛のコストのことを考えると、実際には?45日飼育で、出荷体重は3.5キロになっていると考えるのが自然だと思う。「3キロを超えると機械の調整が難しい」と言っている工場の機械担当者の皆さん、間違いなくそのうちに当たり前になりますよ。というより機械メーカーさんにはビジネスチャンスですね。

 さて、その工場の機械の進歩はどこまで進むのか。現在、国内でも時間9000羽程度までラインスピードを上げるインテが出ているようだが、これ以上やると本当に人の目が追い付かなくなるので、さほどのスピードの上昇はないことだろう。時間2万羽まで上げて、カーブの遠心力でドリップ落しができるという冗談は現実にはならないだろう。

 しかし機械技術の進歩による省人化は順調に進み、?工場内のラインで包丁を持つ作業員はゼロになるだろう。現在いる工場の従業員数は半分になるのではないか。また、現在、中国人をはじめとする研修生・実習生が国内の工場には1000人近くいると思うが、その必要もなくなっているのかも知れない。

 いや、それより中国などは豊かになって、?日本への出稼ぎは昔懐かしい思い出になっていることだろう。日本はアジアの田舎になっている可能性が高い。パワーのある中国人、韓国人に日本は負けてしまうのではないか。

 話は脱線するが、ご存じのように、自動車業界は本格的な電気自動車の時代を目前に控え、部品点数が10分の一になりモジュラー化してベンチャー企業の挑戦を受け、既存の大企業といえども明日は保証されていない状況である。

 2030年にもなると、中国メーカーの台頭などでIBMがパソコンから撤退したように、日本の自動車メーカーも苦戦して世界シェアはどんどん下がるだろう。電気業界も同様で、今でも韓国や中国の企業に浸食されつつあるが、さらに苦戦していくことだろう。

 よって外貨を稼いでいる2大業界の凋落で、円の価値は下がり、日本人の人件費が相対的に高いとはいえなくなりなり、これまでのように安い輸入チキンがどんどん入ってくるということが無くなるのではないか。?輸入比率は現在の30%程度から10%まで下がると予想しておく。

 鳥インフルエンザの防疫という点からも、いま奇跡的に発生していないブラジルからの輸入で堅調となっているが、2030年には?輸入国は、ミャンマーやバングラディッシュあるいはアフリカの最貧国といま言われている国になるのではないか。

 まあ、こういった国々でも鳥インフルエンザの脅威がないとも限らないので、連続して安定的に輸入することは諦めなければならない状況になっているのかもしれない。ただ、コンパートメント方式で、国単位でなく州・県単位で輸入禁止が常識になっているのかもしれないが。

 さて、?飼料については、現在10%前後である国産比率が30%まで回復することを期待したい。

 現在民主党の掲げる「所得補償」でさらに日本の農業が混乱し、5年後の2015年にやっとまともな政策が立ち上がり、2030年にはその成果が出て日本の農業は文字通り復活。株式会社による農業経営が普通になって、孫正義や三木谷浩史のような億万長者が農業界にも現れる。

 ?カロリーベースの食料自給率は、1年に1%ずつ回復するペースで進み、2030年には60%を超えている

 更に余談だが、現在の民主党対自民党の対決の構図はとっくに消え去り、新たな党名の2党が戦っていることだろう。両院制は無くなり、国会議員は200名となり、有権者の半分が、国会議員の名前を全員言えるようになっている。そうなっているから、国会議員も本気でやらざるを得ない。

 農業のことを更に言うと、現在成功しているとは言い難い、屋内で照明を使って育てる「植物工場」であるが、2030年には大きく躍進して、国内の鶏舎の数より植物工場の数のほうが多くなっていると予想する。

 そして、?チキン業者は、人口減少から国内市場の大幅な成長は見込めないとして、植物工場に進出し、地元の土地を有効活用する。

 牛・豚・鶏といった家畜はもともと建物の中で生きる習慣はなかったものと思うが、今では人間が建てた建物の中でより健康に育っている。人間が食べるための植物もそのほうが安定生産できるはずだし、衛生的にも良い。植物工場産の野菜が人気を博していると予想する。

 肝心の鶏肉の消費はどうなっているのか。低価格で、資源消費が少なく、体にも良い?鶏肉は現在1人当たり年間15キロの消費だが、2030年には20キロになり、豚肉と肩を並べそのあとには間違いなく追い越すと誰もが信じる状況となる。

 そして、相場的にはまったく陽の目を見なくなってしまっているむね肉だが、生鳥体重が3.5キロになることでさすがにむね肉1枚をステーキなどで芯まで火を通すことが絶望的になり、?むね肉は2枚にスライスすることがスタンダードになる。

 そればかりか、主婦の心理は20年前とは大きく変わり、「新鮮な素材をそのまま」という意識は廃れて、?インジェクションしたむね肉が量販店の店頭に並ぶことになる。これで主婦はさらに手抜きしておいしい料理を作れることになる。見栄を張らずに実利を取る傾向が20年前よりより強くなっている。

 このタブーが打ち破られることで、?むね肉の卸価格が上昇し、もも肉を上回る事態となる。ということは、むね肉がもも肉の市場を食うわけで、もも肉自体の価格も安くなっているだろう。業界人は「昔はもも肉が高くて良かった」と昔を懐かしむようになるだろう。

 前述したように、飼育成績はグンと上昇しているので、?インテにとっては、むね肉300円、もも肉250円、足して550円で採算に合う(根拠なし)という夢のような状況になっている。

 飼料価格は、国内農業の保護政策の恩恵をこうむってトン35000円となっていると言っておこう。もっと安いに越したことはないが、アメリカはいつまで農業保護政策を維持できるのか。

 最後に産地の地図はどうなっているのだろう。経営単位では現在、上位10グループほどで60%のシェアがあるわけだが、?上位5グループで75%のシェアになっていると予想する。

 合従連合が進み、系列化の波にさらされ、紆余曲折があったが、チキン業界は補助金もあまり受けずに鍛えられた経営と人材で、植物工場だけではなく、チキン産業の周辺の業界も傘下に収める会社も出てくる。「もともとチキン業界だった会社は強いわ!」と噂されるほどになっていよう。

 以上、15個の予想をさせていただいた。前述したように20年前のことを考えると、こんなにも変わるわけはないのであるが、20年後、どれだけ当たっているのか、その日を迎えるのが楽しみである。相撲ではないが、112勝3敗といった横綱のような数字を納められるはずはないと思うが、せいぜい十両落ちしないような成績になればと願う。

(写真:週末に目を通した雑誌。左から、「食品と暮らしの安全」「ミートジャーナル」「鶏卵肉情報」)